ZAZEN BOYSが武道館ライブをやるらしい！ということを知ったのは数か月前。ツイッターで突如公式から流れてきたポスター（あのぐにゃぐにゃのディレイマン）を見たときに、「向井さんが というかZAZENが武道館…？」と嬉しさと同じくらい不安がよぎったことを覚えている。
NUMBER GIRLは、復活当時異常なチケット倍率をたたき出していた。復活効果で伝説的な熱気を帯びていたナンバガでも武道館はやらなかったが、ZAZEN BOYSは今どういう現在地にいるのだろうと考えていた。
今年は満を持してアルバムを出し、MIYA加入以降4人編成の音数のみで楽曲をやる（キーボードサウンドはつかわない）という強靭なスタイルに変更しつつあった彼らを、自分は名古屋で一度見たが、あの４人が狭くぎゅっと集まり密度の高いグルーヴをだす様は、やはりライブハウスに向いているな～とも考えていたので、武道館という大舞台ではどう見えるのか心配だったし、そもそも人集まるのか？とも思っていた。
結果、チケットは友人分込みで４枚応募し、すんなり当選。ZAZENはもちろん知名度は音楽好きなら当然で、まあそこまで知らなくても名前は聞いたことある という人もいるとは思っているが、それでも武道館を埋めるとなると不安は残っていた。
2024年10月27日。天気は雨を抱えた雲が武道館をの上を覆っていた。
チケットも結果完売して少し席も拡張したらしいと聞いた。ということは、武道館はZAZEN好きで埋まるってこと？と思った。同時に「なんか臭そう」とも思った。九段下から武道館へ進む道で前を歩いている同志がよれたワイシャツとか着ていて「さすがに俺らすぎるな」と感じていた。もちろん結果としては男女混合でいろんな人がいて、ZAZENのファン層は確実に拡大していた。
「ZAZEN BOYS」というギザ文字が掲げられており、「このサイズのギザ文字！」と興奮した。どんどん自分の中でZAZENが武道館に立つ という実感がようやく沸いていることに気が付いた。
友人が「椎名林檎が出てくるかもと噂されているらしい」と教えてくれた。自分は「LEO今井のほうがきそう」と答えていたが内心は「ゲストはこないだろ」と確信していた。名古屋で見たときのスタイルが焼き付いていたのと、「武道館だから」とそんな特別なことをしてくるイメージが向井さんに全く持てていなかった。それもあって武道館というキャパでやるということの不安も若干あった。広いし、人も多いし、いつもと聞こえ方は確実に違う。モニターはあったが、これも使うのか？と感じていた。使わなさそう～としか思えなかった。
あともう一つ心配だったのは時間だった。「３時間超」ということだけは公式アナウンスで聞いていて、これ立って聞くのしんどいな～というのはあった。途中でトイレ休憩があるということもそんなのキングクリムゾンとかＹＥＳとかでしか経験がない。プログレかよ。おしっこにいかないようビールは我慢。
というのが始まるまでのお話。
結果からいうと、間違いなく過去みたZAZEN BOYSのライブを大きく塗り替えるほどに感動した。
一曲ずつ語ることもできるが流石にオタクすぎるので、主な最高ポイントだけは先に簡単にのせていく
・まず予想通り、ゲストは無し。4人編成のゴリスタイル（メンバーのいるところだけだとぎゅっとしたら6畳くらしか使ってなさそう）
・MATSURIスタジオからやってまいりましたZAZEN BOYSです を10回以上言う などMCに全く意味がない（つまり通常運転）
・モニターもポテトサラダの時にカメラが演奏の模様を映すのみ（一部風景写真とかあったけど。しかもほとんどビロビロマン（だっけ？）を映したいだけだろみたいな演出）
・レア曲もあった！し、毎度のことだがアレンジがえぐい。この曲ってこうなるんだ！という感動。
・ライブのはじまりはみんな立ったが、時間も長いからか向井さんも「座りなさい」といったマイムをしてみんな着席（ほんとに助かった！！！）。そして、後半戦は立つ人も現れマジダンスホールだった（なんかちらほら立っている人が点在しているのが、昔見たサマソニの深夜ライブを思い出した）
まず前半戦。一曲目はyou make feel so badでしっかり聞かせながら、そこからはドロップD曲が続く。ここでまず、自分はこの武道館ライブの異常さを感じていた。前述のとおり、広い武道館で、演奏スペースは通常ライブハウスとかわらない密度。だが、武道館にいる全員の視線がその集合体に集中していた。腹を殴られ続けられるような重いグルーヴが続き、全員の視線が集中し、それが彼らのエネルギーをどんどん溜めていると感じていた。とんでもない、でかい熱量がステージにたまり、それが重くずっしりしたグルーヴとして放出されている。武道館はもっと広くいきわたるような演奏がされるイメージがあるが、そのエネルギーがたった6畳の空間に押し込まれているこの始まりに、自分はすごく興奮していた。
あと、自分が何故か目に涙がたまったのは「バラクーダ」の演奏中だった。向井秀徳の「フロントマン」としての凄みを正面から食らっている と感じた。複雑な拍数のリズムに乗りこなし、自分のものとして、表現をしている。ピンクタイガーピンクタイガー でマイムを行う。この滑稽さ 愛らしさとグルーヴのかっこよさがとんでもないレベルで同居してて、自分があこがれたフロントマンはやっぱりすごすぎると鳥肌がたった。
レア曲 でいうと「I Don't Wanna Be With You」から「Sabaku」のつなげ方、アレンジは衝撃的だった。Sabakuのアレンジがとにかく、こういう形になるのか こういったしっぽり聞かせるダンスミュージックにかわるのか とあっけにとられる素晴らしいアレンジだった。最後の締めが「割と 楽しい」にかわっていたのも、お茶目だしにくいな～と思った。好きになっちゃうよ。
ちなみにI Don't Wanna Be With Youについても、カシオメンのディレイリフが素敵すぎて、個人的には「Maseratiだ！」と感じていた。このあたりではもうズッシリグルーヴは優しく開放され、それこそ武道館向けの広く弾き渡るサウンドになっていた。大きなミラーボールが武道館全体を回していた。ダンスホール。光の演出。サカナクションかよ！
後半はもう、書ききれないが、自分の好きな「6本の狂ったハガネの振動」のアレンジはもちろん、ハードリカーなど、とにかく「ノる」に特化した構成だった。後半は立ちっぱなしで聞いていた。とにかくブチあがる という内容で、「半透明少女関係」ではこぶしを突き上げていた。まさに「武道館ライブ」だった。
アンコールは「KIMOCHI」。ここでの合唱も忘れられない「ケイアイエムオーシーエイチアイ」を武道館全体で合唱。こんな人数でこれを歌う日が来るのかという感動。そして向井さんが拳をあげて、指揮者の「とめ」を行って、合唱がとまり、画面に「ZAZEN BOYS」の文字。止まるメンバー。とにかくかっこよすぎる。どこまでもZAZENらしく、向井さんらしく、それが武道館でやり切って、確実に感動を与えている。とにかく「表現者」としてかっこよすぎた。
ZAZEN BOYSは今まで通りだった。今まで通りだったが、武道館という空間を完全に掌握してエネルギーにしていた ということは、バンドとしての凄みでしかない。広さがどう変わっても、どういう場所に行っても、ZAZENはZAZENのまま、バンドとしての強さだけで観客を圧倒する。それはわかっていたはずだが、改めて今回のまれて再認識できた。
ZAZEN BOYSの現在地を考える。
まさに、これがZAZENの現在地で、最高到達地点なのだと感じた。この人数をこの熱気を、今の密度高いスタイルで作り出せる。
自分たちにまだどんな景色を見せてもらえるんだろう なんて、ありがちな感想を、まさかZAZEN BOYSで思うなんて思ってもみなかった。
